偽島13日目 『Alwan's monology』

［Alwan's monology］

我輩は猫である。名前はまだ無い。
とは誰の台詞だったか。

かの文学者の言に習えば、

「俺様はミミズクである。名前はアルワン。
　故あって猫のヌイグルミの中に身をやつしている」

てな感じか。
こうなった経緯は見るも涙、語るも涙。
つーか語りたくねぇ。省略だ省略。

俺様は故あって今は旅路の途中だ。

旅の道連れは餓鬼ばっか。
正直うるさいったらありゃしねぇ。

ガキ共の引率も楽じゃねーぜ。
そう言えばつい先日もこんなことがあった…

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[go for unknown I-10 ]

――空白の地図（くうはくのちず）

　それは未知への探求
　新たな道の開拓
　偉大なる先駆者たち


――地図の空白（ちずのくうはく）

　それは意識の死角
　見えているのに見えていないもの
　知者ゆえの落とし穴



『…で、そこが地図の空白てぇのかい？』
「そう。人が行き交う隙間に生まれた未知の領域」

俺様の問いかけに真面目に答える獣耳の少女。
ラズと呼ばれている。名前は確かラピスラズリだったか。

性と名を持たないあたり実に偽名くさいが、俺様オトナ。
深くは突っ込まないでおいてやる。


こいつは我が一行の参謀役。

頭は良いと思うんだが、常識が欠如してて行動が突飛。
例えるなら『乱丁だらけの歩く辞書』といったところだな。
役に立ちそうで役に立たねぇ。


事の発端は旅の進路変更にある。
昨日まで西に向かっていたのに、
魔方陣に着いたとたんいきなりとんぼ返りしやがった。

ナニ考えてんだと問い詰めた結果が地図の話。
読者諸君の為に優しい俺様が要約してやると、つまり

　『未探索エリアが見つかった』

って事だな。
一言で済むだろこんなもん。

だがしかし話が通じるだけまだマシか。



もう一人のリズとか言うガキんちょはもっと恐ろしい。

ガキってのは無知をいいことに
無邪気に笑いながら恐ろしいことを平気でやる。

（チリンッ）

この音が悪夢の真っ只中なのを再認識させる。
猫の尻尾に鈴付けるか普通？

悪意が無い分、たちが悪い。
こんなもんぶら下げてたら隠密行動取れねぇだろうが。
隠密行動が取れないと仕返しすら出来やしねぇ。

どうやって仕返しするか、それが今後の俺様の課題だ。


おっと話がそれたぜ。
しかしまぁ…

『よくもまぁこんな事に気が付くもんだ』

こいつの細かさには関心するぜまったく。
いつの間に集めたのか、大量の羊皮紙。

紙じゃなくて羊皮紙だ。ファンタジーなやつめ。
それには偽島の地図と、ここ一週間の人の流れが事細かに書かれている。

そこには
『アリッサ＆メグリサ禁断の世界』だの
『イガラシ渾身の美人局』とか意味不明の事も書いてある。
新聞かっつーの。

だがしかし…
こいつ俺様達と一緒に居たはずなのに、いつの間に集めたやら。
聞けば10倍くらい説明が返ってきそうで面倒くせぇ。

こいつはこいつで謎が多いヤツだ。


「私も気が付かなかった」
『…あ？』

否定の一言でモノローグから引き戻される。

「気が付いたのはふれあ」

…マジかよ。
ふれあっつーのはウチの姐さんだ。

霊力の方はからっきし。

いや、霊力そのものは強ぇんだが使いこなす技術が無いんだな。
だから補佐役として俺様がついてるワケだ。

探査系と言えば姐さん一番苦手な部類のハズだぞ。

…。

いや、まてよ…
意識の死角って事は、頭のいいヤツほど引っ掛かる論理トリックか。

と言う事は…

『なるほどな…バカだから気が付いたのか』
「…」

流れる微妙な空気。
なんだよ、違うってのか？

ラズの目線が俺様を向いてない。
俺様の…後ろ？

「…アルワン、よく言った」

あ゛…。


（に゛ゃ～～～～～～～～～～～～～～～）
――そして黒猫は今日も空を舞う