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[――The monologue of a girl with the name of an ore

「ははは・・・・・・やっぱ若い子には勝てないねぇ。」

定例の手続き――だったはずの出来事。
歪み・収縮・開放・補正…察知されるはずのないイレギュラー。
それは一つの歪を消す為に取られた方法。

…たる――は、確かに存在そのものを消滅させられた。




---------------------------------------------

「――うん」

独白。

著しく力を制限された土地。
解かれる為に用意されたかのような謎。

例えばこの宝珠もそうだ。
明確な魔力反応。

それはこの島に置いて力を与える魔力の結晶。
資格を表す鍵であるなら、このような力を与える必要はない。
まるで戦いを奨励するかのような仕組み。


そしてここ数日のエレメントの変化。
      ことわり
世界の理すらも変える島全体の挙動。

さらには発生したイレギュラー。

島のルールを決めた者と、招かざる第三者の介入。
各々の意図が浮かんでは消える。

複雑に絡み合った嘘。
嘘に隠された真実。



まったくアンタ馬鹿でしょ?

一人歩く少女に届く声。
特徴的な耳がピコピコと揺れ動く。
あたりに人影は無い。

      ゲート
(――『門』を通じての会話は危険)
しょうがないでしょ、貴方連絡くれないんだし

姿の見えない声に、少女が答える。

正確には声ではない。
だだっ広い平原は沈黙を守っている。
声を介さない意思の疎通。

                            ルールブレカー
気が付いてるんでしょ? 規律を乱す者の介入
(――――問題ない。未知の介入は予測の範囲内)
                            インタラプト
だから解析をすっ飛ばして事象介入した…そう言いたいわけ?
 貴方らしくもない。少し考えれば分かるでしょ?


器を失った魂は四散する。
それは世界のルール。

器が破壊されれば、器を基点に発動していた術式――
魂を囲っていた檻も破壊される。

見捨てた方が良かった…会話の相手はそう言っている。
事実、そう言う選択肢も確かにあった。


(緊急事態。――を見捨てれば――が暴走する)

建前。
本当はただの気まぐれ。


まぁ確かにそうだけどね。
 でも余計な力を使えば貴方が自滅するわよ?


心配そうな口調。

(――大丈夫。力は殆ど使ってない)
力「は」殆ど使ってない…ね……

広域対霊結界――
霊体の遮断を目的としたそれは、本来は外から内への霊的進入を防ぐもの。
しかしその特性上、中から外への移動も不可能になる。

れっきとした広域結界であり、即興で発動できる代物ではない。
少ない魔力で起動するためには、念入りに準備をする必要がある。

責めるような口調に、悪びれることもなく少女は返す。


(こんなこともあろうかと準備しておいた)

準備良過ぎ。
 …まさか未来視もしたんじゃないでしょうね?


(その問いは否定。状況からの予測。
 ――正直、ここまで直接的手段に出るとは思ってなかった)

それは真実だろう。

もし予測していたのであれば、
破壊を防ぐか新たな器を用意していたはず。

いや。
器を用意しなかったのは、
傍観者としての少女の妥協点だったのかもしれない。

姿は見えないが、向こう側でため息をついているのが分かる。
考えは読めなくとも、次の行動が手に取るように見えているようだ。

              おとり
自身を餌にした罠――

直接介入こそ避けたものの、
これみよがしに間接干渉してみせた。

さらに、このタイミングでの単独行動。
素人目にも分かる誘い。

冷徹無慈悲なお姫様が、どう言う心境の変化やら……
(――それは誤認識。私はやりたいようにやっているだけ)
 へいへい、そう言う事にしておいてあげるわ 


少女はその呟きを聴かなかったことにする。

相手の正体が分からない。

だからこそ、誰が見ても分かるこれみよがしな罠。
しかし、相手にとっては好機になるであろうタイミング。

あとは相手次第。
誰に仕掛けるか、あるいは動かないか。
その全てが、次の選択肢に繋がる。

張り巡らせた術式の感度を確認する。


二つの力がせめぎ合うチビッコも、
天使の力を内包する娘も強い力を持っている。

大きな力は探査系術式の妨げになる。
その為にも一人になる必要があった。

それに、確かめたいこともある。


(――それよりも圧縮術式の準備は進んでる?)
そりゃ――から頼まれたから進めてるけど
 ……本気で圧縮魔術路使うつもり? この島って――


参加者の強さを平均化させて、争わせているんでしょ?

そう。
目的はともかく、その部分だけは明確な事実。
傑出した力は排除の対象となる。

                   ・  ・  ・  ・  ・
(――心配は不要。この島の流儀に合わせた調整はする)

絶対の自信。
会話の相手が再び嘆息する。

……分かったわ。調整込みであと1週間。

 2個でも行けると思うけど、不安定な稼動になるから
 出来れば力点…宝珠を増やしておいて


それと…と一言付け加える。

無茶はしないこと。
            よ              マ イ マ ス タ ー
 たまには召喚びなさいよ、愛しい我が主様


言うが早いか、通話が打ち切られた感触。

照れるぐらいなら言わなきゃ良いのに――
とは少女は言わない。


少女は思い出したかのように、
探査術式をもう一度たぐり寄せる。

遠くで別の門を開いた感触がある。
カードを基点とした魔術回路。

さらに別の方向で、大掛かりな魔術の発動。
こちらは古式の神術の類か。

動きはあった。
心配せずとも二人なら、何とかするだろう。


「――さて」
                           ツインテールキャット
とりあえずは、目の前に現れた障害を何とかしないと――

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