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――Twas brillig, and the slithy toves
Did gyre and gimble in the wabe;
All mimsy were the borogoves,
And the mome raths outgrabe.


■メルヘンとは

その定義は、実は非常に難しい。

民俗学は昔話を文化史的・精神史的資料として研究し、
 心理学はその物語を心的過程の表出として考え、
 文芸学は昔話をして昔話たらしめるものを確認しようとつとめる


これはある研究者が記した一説である。


上記に挙げた民俗学・心理学・文芸学にとどまらず
宗教学・文化人類学・社会学・犯罪学など様々な分野の研究者が
メルヘンを定義付けしようとした。

このため、学問によりその定義が異なるのが『メルヘン』である。

これらの定義に共通するのは「物語」が主軸に位置すること。
よって、『特定の分野の物語である』とは定義出来るであろう。


メルヘンと言う言葉自体は、
ある国の『メルヒェン(Marchen)』と言う単語を語源とする。

ある学者が行った、昔話をその類型ごとに収集・分類しようとした試み、
AT番号による分類が『メルヒェン・メルヘン』と言う単語を世界中に広げた。



■一般的なメルヘンのイメージ

一般的なメルヘンのイメージは
「児童向け」「ファンタジー(非現実)」であろう。

しかし実際は、メルヘンの多くは
昔話、伝承、伝説などの口伝の物語を元にしている。

これらの口伝を読みやすいように編集したのがメルヘンである。
メルヘンは作者の思惑により様々な姿へ形を変える。


ある島国では昔話と童話の両方をメルヘンと認識している。

これは『メルヘン』と言う単語がこの国に入ってきた際
メルヘンが「童話、またはおとぎ話」と翻訳されたのが原因である。



■警告物語としてのメルヘン

メルヘンは、○○すると××しますよといった
ある種、警告物語的な意味合いを含んでいる。


子供が読めば情操教育のための利用となり、
戦時中には政治的な民衆指導のために使用され、
ある時代には民衆の生活の指針として利用されたケースもある。


いずれの場合も、その基本は「意味の置換」である。

童話や昔話は、警告物語的側面を持つため
直接書くと残虐性の高い表現も多い。

そのため直接的表現を避けるために、登場人物を記号化し
オブラートに包んだ形で、その意味を伝える手法として用いられたのである。
(もっとも近年は、残虐的結末を改変された作品も多い)



■変化するメルヘン

様々な形で都合の良いように改編されてきた経緯により、
同じ物語をベースにしていても実に多用な変化を見せる。

有名な話だと――

赤い頭巾を被った少女と狼の話は
狼に食べられた少女を、狼の腹を裂いて助け
狼のお腹に石を詰め直す話を耳にした事がある人は多いだろう。

だがこの話、少女が狼に食べられてそのまま
バッドエンドで終わる結幕もある。


この変化は、「狼」が「何」を指すかで意味が変わるからである。

また、少女に「赤い頭巾」と言う記号を与えたのも一人の作者で
それより以前のこの話には「赤い頭巾」は登場しない。
(人種差別へのアンチテーゼとして語られた歴史もある)



■夢を与えるメルヘン

メルヘンに夢を与えたのは、著作権にとても厳しいことで
世界的に有名な某エンターテインメント会社である。

メルヘンの残虐性を極限にまでオミット(除外)し、
子供に夢を与える作品に作り上げたその手法は
近年の『メルヘン』に多大な影響を与えた。

現在のメルヘンのイメージは、
この企業が作り上げたと言っても良いだろう。



■G童話とA童話

童話と言えば、G(URIMU)童話とA童話が有名である。
この2種の童話、同じ童話と言う分類でありながら
その出自は大きく異なる。

G童話は、ここまでの説明の通り世界に散らばる昔話を
元に編集が行われている。

よって、世界各国にG童話と似たような話が存在する。
当然である。原点が同じなわけですから。


A童話は作家Aの創作である。
作品を作る以上、過去の作品の影響を受けることはあるだろうが
基本的には完全創作である。
(以後の歴史にインスパイアした作品は多い)

このように、同じ『童話』と言うカテゴリでも
出自が違うのは面白い話である。



■もう一度メルヘンとは

ある童話の序文で、メルヘンの本質についてこのように述べられている。

「小さい木の葉に宿った露のひとしずくが、さわやかな朝日に光っている」
「子供の清らかな汚れのない、青く白く光る目」
「濁らない空想が、メルヘンを守ってきた生け垣だ」


また、ある童話の研究家の一人はこのように述べている。

「詩的空想によってつづられた物語で、とりわけ魔法の世界から発しており
現実生活の制約に拘束されない不思議な昔話であり、信じられないと思いながら
身分の高い人も低い人も老若男女みんなが喜んで聞くもの」


純粋にその世界観を楽しむのが、
メルヘンの正しい嗜み方と言えるかもしれない。

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