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『ラズの手記 番外編 ~Welcome to an alternate world!~』

――If she is an active magic girl
   ~もしもラピスラズリが活発系魔法少女だったら~

「あーもうっ!! 何なのよこいつ等は!!?」

砂地の上を年若い一人の少女が走り抜ける。

黒のアンダーシャツにダボダボのズボン。
アンダーシャツの上から羽織っている赤いキャミソールが一際目立つ。
走る速度に合わせて、後ろ手に縛った焦げ茶のポニーが飛び跳ねている。

砂漠を旅するには明らかに軽装だが、
今はその軽装が幸いしていた。


さらにその後方には轟音を立てながらうごめく砂の塊。

『――サンドゴーレム。魔法生物の一種で――』
「それは分かってるってば!」

声は二人。少女は一人。

砂地に足を突き立てるようにして急旋回。
速度を保ったまま、身体があり得ない方向に曲がる。

「何でこのタイミングで来るのかって事よ!」
『………捕食?』
「っっ!」

再び疾駆。
足場の悪い砂の上とは思えない動き。

だが、砂の塊の動きはさらに早い。
もはや捕まるのは時間の問題だった。

「やるしかないか…!!」

少女が観念したように腰の剣に手を掛ける。

『――それ装飾具。刃がない模造品』
「っっ! だったらアンタが何とかしなさい!」

言うが早いか、少女は鞘から引き抜いた剣を迷わず地面に突き立てる。

引き抜かれた剣は黄金。黄金の剣は門であり鍵。
魔術回路の展開の為に必要な手順。

    Ausloser         Der Klang von einem Wasserfall klingt, und es kreuzt sich.
発現せよ――水神の社 樹氷の園 水面に広がる真なる円

刹那――剣を中心にほとばしる冷気。
ビキビキと音を立てて氷を成形していく。

熱砂に漂う凍気。
それは砂漠に浮かぶ一枚の銀盤。

     リュビズオーチャード
『――水の属性場。数分しか保たないけど』
「上出来っ!!」

靴のかかとを氷に打ち付ける。
ガシャコッっと飛び出すスパイク。

スパイクを軸に氷にアンカーを打つ。
そして剣を氷から引き抜くと、迎え撃つ体制を取る。

「さあ来い!」

この手の怪物は手負いにすると面倒だ。
地中に逃げられない場に誘い込んで一気に叩く。

必勝の策。

「さあ…来………い?」

来ない。

来ない。

来ない。

砂の塊は距離を取ったままウロウロしている。

『砂という特性を持つ以上、水は苦手。多分上がってこない』
「っっ! だったら早く言いなさいーーーっっ!!」
『――最初に言おうとした』

徐々に氷が溶け始める。
時間に余裕がない。

「ああっもうっ! 使いたくなかったんだけど……」
『――と言いつつ毎回使ってる』
「うるさい黙れ。と言うか今すぐ仕事しろ」

剣を構える。突きの構え。
今手持ちの術の中でもっとも強力な呪文。

        トリガー
「――発動せよ」

多重詠唱――声が二重三重に響く。
肌で感じ取れるほどの魔力の渦。

それは異なる術式による共振。

     It is the land in which a dragon lives there
『――其は守護者の棲まう地
       Er ist ein Konig des Himmels
   ――其は空の王
             Elle est reine de terre
     ――其は陸の女王
               El es Dios marino
       ――其は海の主

姿は見えず、されど轟く水の轟音。

水が蠢く。
それは質量という名の暴力。


獰猛な笑み。
獲物を狩る狩人の顔。

     デリート
「全てを殲滅せよ」

撃鉄となる一言。

    プシューアイシクル
刹那、水の槍が砂の塊を貫く。
轟音が遅れて聞こえる。

音を置き去りにした、必殺の一撃。
                 プシューアイシクル  リュビズオーチャード
サンドゴーレムを貫く水の槍は、水の場を巻き込みさらに肥大化する。

  と
「殺った……!!?」
『――魔力拡散を確認。活動の継続は不可能と推測する』

巻き上がった砂埃が風に流される。
そこにサンドゴーレムの姿は既に無かった。

少女は油断無く辺りを見回すと、剣を鞘に戻す。


「さすがに…キツかった…かぁ…」

無理をした代償か、少女の膝が笑っている。
早いところ砂地を出て水を浴びたい。

少女がそんな事を考えてる最中。

『――なお、魔力反応3つ。さらに接近』

無情な一声。

「…………………へ?」
『あれだけ音を出せば縄張り意識が強いのが寄ってくる』

たらりと流れる冷や汗。
あと……3匹……?

「マジでーーーーーー!!?」



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[日記補足]

※この話はフィクションであり本編には影響しません。

一度書いてみたかったネタ。

書いてみて改めてサブ向きのキャラだと再認識。
どうしてこう難儀な性格にしたのか…。

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