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――The monologue of a girl with the name of an ore

少女の前には1つの珠。
それは深い蒼。海を写す色。



水の宝珠と呼ばれるもの。
守護者との戦いの末手に入れたもの。


「――そう、これ自体は魔力を封入したただの術具」

独白――はっきりとした断定。
もちろん少女はオリジナルを知っているわけではない。

島の規模と仕掛けの規模。
島を統べる7つの秘法としては明らかに力が足りない。
それに手に入れた水の宝珠は1つではなく3つ。

あとは単純な推理。
これが意味することは――


「これは鍵。招待状であり資格」

島の秘密に近付くための。
否――島の秘密を知っている者へ近付く為の。

この宝珠がオリジナルを分割したものなのか、
コピーなのか、レプリカなのか、別の何かなのかは分からない。


人為的に捻じ曲げられたマナを持つ土地。
これみよがしに、わずかに魔力を与えられた宝珠と言う名の術具。

そして膨らんで消えた近い世界の波動。
島の探索のたびに見え隠れする影。


「――まだ」

判断を下すにはまだ早い。
終末まで、ただ事態を見据える。
それが少女がここに居る理由――本当に?

少女の探求者としての一日が今日も始まる。


------------------------
――A certain witch's every day

深淵たる暗闇の中。
ランプの明かりも届かない月の無い夜。

左手にはルーンの刻まれた短剣。
右手には今しがた手に入れた水の宝珠。

慣れた手つきで、地面にルーンを刻んでいく。
むせ返るような鉄の臭い。

そのルーンの色は紅。
最も単純で最も強力な魔術媒体。

常人であれば失神するような量。
だが、少女は意にも止めない。

通常「それ」は、契約の締結のトリガーに使うことはある。
だがこれほどの量となると、それは生贄に近い。


そう、それは純血の魔術師の血。
それが起こす現象は魔術と言うより呪詛に近い。


ルーンを刻む作業が終わったのか、
最後に短剣と宝珠を中央に安置する。

何かを唱える。
一瞬の閃光と静寂。
集まり、弾けた濃密なマナ。

一つの儀式の完成。

(――これは珍しい。我をお呼びですか主よ)

誰も居ないそこから声が聞こえる。

否――それは少女にのみ届く言葉。
言葉の発生源は一振りの短剣。

少女が口を開くまでもなく短剣は言葉を続ける。

(なるほど、このマナの流れ…
 これでは主が苦戦なさるのも理解出来ます。

 土地に対抗する手段として我を呼び出されましたか。

 水を素体としたこの媒体。これを我をリンクさせましたか。
 相変わらず卒の無い技術です。

 しかし、この媒体は媒体で…なるほど。
 主が興味を持たれるわけです。

 これは興味深い)

問われるまでも無く話を続ける。
短剣はさらに言葉を続ける。

(それでどうされます?
 まだ我は必要ないと思いますが――)

聞いても居ないのに
まるで答えの分かっているかのような言い回し。

そして少女は言葉を否定しない。
そう、必要になってからでは遅い。
この儀式は大きく力を損なう。

だから「今」用意した。
この儀式はただの準備に過ぎない。

だが使うのは今ではない――

「――現状待機。力は振える?」

少女の問いかけ。
答えの分かっている禅問答。

(素晴らしい媒体ですが、1つでは足りません。
 主もそのつもりでしょう?)

その答えが意味するところは一つ。
宝珠の数は7つ。

(それよりも…)

短剣の意識が出血の跡に向いたのが分かる。
あれほど激しく流れ出ていた少女の出血が止まっている。


「それは問題ない」

(止血と造血ですか。
 必要とは言え無茶をなさる)

聞こえるはずも無い嘆息。

(それでは我は主の命に従い待機に入ります。
 必要なときはいつでもお呼びを)

短剣は話すだけ話して言葉を終える。
静まる気配。そして再びの静寂。

残されたのは血で描かれた魔法陣と少女。
否――

『――Sie alle sind Phantome(それは全て幻)


少女の声に答え、血液の跡が虚空へと吸い込まれる。

少女が立ち去った後には何も残らない。
まるで何も無かったかのように――

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