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その夜は魔物の時間。
その夜はあの世とこの世の境界が無くなる時間。

遊ぼうよ僕らと。
おいでよ僕らの国へ。

大変だ! 連れ去られないように仮装しなきゃ!
悪戯かお菓子か。お菓子をくれないと悪戯しちゃうぞ!

――けちんぼウィルの伝説

昔々あるところに、ウィルと言う名の鍛冶屋がおりました。
このウィル、大層の飲んだくれで、いつも酒ばかりかっくらっていました。

しかもこのウィルと言う者、ケチで乱暴者で人を騙す悪人でもあったのです。


あるハロウィンの夜。
ウィルがいつものように酒場で飲んで酔っ払っておると、
地獄からやってきた悪魔に出会いました。

ハロウィンの夜はあの世とこの世の境がなくなり、
その時だけ時間が止まってしまうのです。

この時を狙って多くのお化けたちが
人間に取り付こうとやってくるのでした。

悪魔は「お前の魂を取ってやる」と言ってウィルの魂を
奪おうとしますが、魂を取られたくないウィルは機転を利かせて
こう言ったのです。

「分かった。私の魂をあげよう。
 でも最後に酒を一杯ご馳走してくれ」

一杯くらいはいいかと悪魔は思って、
その一杯の酒を買う為の銀貨に変身しました。
そして「さあ、では酒を買うがよい」と言ったのです。

しかし、ウィルはお金に変身した悪魔を素早く
自分の財布の中に閉じ込めてしまいました。

悪魔は財布から出たいのですが、
ウィルは財布の口を堅く閉じていてしまい外に出られません。

ついに悪魔は根負けして「出せ!出してくれ!」とウィルに懇願したのです。
するとウィルは悪魔にこう言いました。

「出して欲しければ取引しよう」

こうしてウィルは悪魔に
『10年間はウィルから魂を取らない』と約束させたのでした。


そして10年の月日が経ちました。
ウィルがハロウィンの夜に道を歩いていると
またあの悪魔に出会いました。

「今度こそお前の魂を貰うぞ」

悪魔は言いました。
ウィルは今度も魂を取られたくありません。
そこでウィルは悪魔にこう言いました。

「分かった。私の魂をあげよう。
 でも最後にあの木になっているリンゴを一つ取ってくれないか」

悪魔はリンゴくらい取ってもいいかと木に登りました。
するとウィルは素早く木の幹に十字架を刻んだのです。

悪魔は十字架が怖くて下に降りる事が出来ません。
悪魔はウィルに「降ろしてくれ!頼むから降ろしてくれ!」と
懇願したのです。

「降ろして欲しければ取引をしよう」

こうしてウィルは悪魔に
『自分の魂を絶対に取らない』事を約束させたのです。


それからさらに月日は流れ、
年老いたウィルはついに寿命で死んでしまいました。

天国に行こうとしたウィルは、
生前の粗暴のせいで天国に入れてもらうことが出来ませんでした。

仕方なく地獄の門を叩いたウィル。
そこであの悪魔と再開したのです。

「地獄に入れてくれ」

ウィルが悪魔に頼むと、悪魔はしたり顔でこう言ったのです。

「お前の魂は取れない。だって、約束したからな」

ウィルは途方に暮れてしまいました。
だったら何処に行けばいいんだ?と悪魔に尋ねると
悪魔は「元居た場所に戻るんだ」と答えたのです。

ウィルは仕方なしに、来た道をトボトボと戻り始めました。
その道はとても暗く、真っ暗で何処を歩いていいか分かりません。

仕方無しにウィルは悪魔に頼みました。
可愛そうになった悪魔は、地獄で燃えている火の塊を
一つウィルにあげました。

ウィルはその火の塊をカブの中に入れてランタンを作りました。
そうして、ランタンを持ってこの世とあの世の境目を
彷徨うようになったのです。


――ジャック・オー・ランタンへの変化

このお話は、ジャック・オー・ランタンの元になった伝説。

哀れなウィルの魂――
そう『Will o' the wisp(ウィル・オー・ザ・ウィスプ)』の誕生である。

その後時代を経て、ランタンを持つ者…
当時の一般的な男性の名前であったジャックを冠して
『Jack-o'-Lantern(ジャック・オー・ランタン)』と呼ばれるようになった。



――ハロウィンと言うお祭り

Halloween(ハロウィン)は、ある宗教の諸聖人の日(万聖節)
前晩(10月31日)に行われる伝統行事である。

諸聖人の日の旧称『All Hallows』の『eve(前夜祭)』であることから
Halloweenと呼ばれるようになった。


さらに遡ると、ある土地に住む民族の収穫感謝祭に行き当たる。
その地域の1年の終わりは10月31日。

10月31日の夜には死者の霊が家族を尋ねたり
精霊や魔女が闊歩すると信じられていた。

これらの霊から身を守る為に仮面を被り、
魔除けの焚き火を焚いていたのである。


なお、10月31日の翌日は
新年の始まりである(冬の季節の始まりである)サウィン祭である。

サウィン祭――11月1日の朝、
ドルイド祭司は魔除けの焚き火から各家庭に燃えさしを与える。

人々はこの火を用いてかまどの火をつけ家を温め、
『Sith(シー)』と呼ばれる妖精(バンシーなど)や悪霊が
家の中に入らないようにした。

あの世とこの世の境目がなくなるのは
『この時期』であり、『1日』ではないからである。

この時期徘徊するとされるのが人魂や霊魂――
『ウィル・オー・ザ・ウィスプ』であり
『ジャック・オー・ランタン』である。

(『ウィル・オー・ザ・ウィスプ』は
 東洋の島国では『鬼火』『狐火』の意味でも使われる)



また、霊を静めるために人々は供物を差し出したと言う話もある。
差し出さなかった家には悪いことが起こるとされていた。

これは『soul cake』(後述)に繋がる話だが、
この話が先か『soul cake』が先…つまり後付けの話かは不明。



ハロウィンの起こりは、この収穫感謝祭とサウェン祭が
ある宗教に取り入れられたと言う説が通説である。

なお、ウィルのランタンがカブからカボチャに変化したのもこの時期の事。
祭りが開催される土地が変化して、その土地で取れる作物が変化したのと、
カブよりカボチャの方がランタンへ加工しやすかった事が理由である。


――Trick or Treat?

『Trick or Treat(トリック・オア・トリート)』の習慣は、
『souling』と呼ばれる西洋の習慣から発展したと言われている。

11月2日の死者の日に、ある宗教の教徒は『soul cake(魂のケーキ)』と呼ばれる
『干しぶどう入りの四角いパン』を乞いながら、村から村へと歩いた。

ストレートな言い方をすれば物乞いである。
これは教会が奨励した行事であり、裕福な家庭が
貧しい家庭に援助を行う意図があったとされる。

魂のケーキを貰う側はその代償として、
亡くなった親類の霊魂が天国へ向かう手助けをすると
約束したのである。


「魂のケーキの風習」「悪霊を鎮めるために捧げられた供物」
「あの世とこの世が繋がる日」「街中に溢れかえる悪魔」
「悪魔に連れ去られないように行う悪魔の扮装」
「けちんぼウィルの伝説」「魔除けのかがり火」
「カブ(カボチャ)のランタン」

などなど、複数の要素が組み合わさって生まれたのが
現代のハロウィン、そして『Trick or Treat?』と言う言葉である。

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少女は手記をぱたりと閉じる。

「悪魔の扮装は、悪魔を脅かして退散させると言う説と
 悪魔に仲間と思わせて騙すと言う説がある。

 悪魔に扮してお菓子を貰う、と言うキーワードからは
 『(聖別された)お菓子で悪魔を払う』とも
 『悪魔と一緒に逢魔を楽しむ』とも取れる」

「さすがに世界的に有名なお祭りだけあって、説は千差万別。
 ここに記したのは比較的ポピュラーな部類の話。

 調べればもっとカルトな内容なものも出てくる」

「ちなみに――」

一瞬の沈黙。

「この島は『門』が開きっぱなし。
 陸と海の狭間の世界も真っ青な不安定な地場。
 魔の眷属も当たり前のように闊歩している。

 だから実際は毎日が――」

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