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■機能面から見たフルプレート

機能面からフルプレートを見た場合、
どういう目的でフルプレートが使用されるかを
考える必要が出てくる。

フルプレートは防具である。
まず第一に身を守る目的で使用される。

では何から身を守るのであろうか?
相手の攻撃――武器から身を守るのである。

当たり前のことではあるが、
この当たり前のことが鎧の機能に大きく関わってくる。

■刀剣類に対する対策

刀剣類と言っても種類は多いが、
西洋の武器の多くは日本刀ほど刃は立っておらず
『重さで叩き斬る』ことを主眼に造られている。

つまり、攻撃の軌道は主に
・唐竹割り(頭部への振り下ろし)
・袈裟切り(鎖骨から心臓を含む臓器への振り下ろし)
・首打ち(上段横薙ぎによる攻撃)
・横薙ぎ(胴体の内臓破壊)
・足払い(避けにくい脛への攻撃)

となる。
種類によっては突きも可能であることから
・胴部突き(胴体の内臓破壊)

も加わるであろう。

逆に言えば、刀剣類を相手にする鎧は
これらに対する防御を備えた形状が必要になる。
(例えばエリの立った肩当などは、刃が横滑りして首に到達しないように防御する)

切っ先を弾くために比較的肉厚な鉄板を使用したり、
西洋剣は切れ味に主眼が置かれていないため、
切っ先を絡め取るチェインメイルなども有効であった。

刃さえ止めてしまえば鈍器と同じである。



■鈍器に対する対策

肉厚な鉄板と言えど、より重い質量の塊で殴れば
その装甲を凹ませることは可能である。

鈍器はある意味、対プレートメイルに特化した武器である。
鎧の上から殴ればいいのだから性質が悪い。

また、硬い物を壊す目的に使える武器だからこそ
人間の固い部分…骨を折ったり砕いたりにも
非常に向いている。


一方で鈍器には二つの弱点がある。
それは重さに関係する。

鉄の塊に対抗するためには質量が必要であり、
その質量ゆえに振り回すにはかなりの力を必要とする。

また、力を効果的に伝える為には
重力や遠心力を利用する必要が出てくる。

つまり、攻撃方法が『上段からの振り下ろし』や
『横薙ぎ』などある程度特定されてしまうのだ。


また、硬い素材vs硬い素材であれば衝撃も伝わるが
柔らかい素材相手では衝撃が分散されてしまう。

そのため、鈍器に対する対抗策はキルトなどの布防具や
前述したチェインなどが上げられる。

その他、装甲の内側を空洞化させる方法もある。
凹むことで、打撃による衝撃を和らげるのである。


盾なども鈍器の衝撃を逃がすのに大きく役立つ。
大きな衝撃も受け流してしまえば、致命傷にはなりえない。
人間の身体自体、衝撃を逃がしやすい性質を持っている。


こうした対策は鈍器への王道である。
しかし、チェインメイルやキルトはその構造上
尖った武器には弱い。

モーニングスターやウォーハンマーなど、
棘付き重量武器の誕生である。



■槍に対する対策

では、槍を代表とする突く武器には
どう対処すればいいだろうか。

槍は戦局により用途が変わる武器である。

突くイメージの強い槍ではあるが、
人の腕力で突くだけでは分厚い鉄板を打ち抜くのは難しい。

プレートアーマーのような重鎧を貫通するには
鉄板に負けないよう槍自身の重量を重くし、
慣性を利用して質量ごと叩きつける。

またランスに代表されるように、
馬などの騎乗動物を利用してその突進力を
利用するのも有名な槍の活用法である。

逆にパイクなどのように、相手の突進力を
利用する武器も多く存在する。


一方で徒歩による集団戦であれば、
隊列を整え相手を近寄らせない壁として利用する。

プレートアーマーならともかく、チェインや
リングメイルはその構造上尖った武器には弱い。
革ぐらいであれば人の突進力で易々貫通可能である。

飛び道具が発達してない戦争においては、
長い武器は大きなアドバンテージを持っていた。


槍に対する対策は、鎧の構造としては難しい。
敢えて言えば安易に力を集中させないように
装甲に曲面をりようすることだろうか。

ただし、鎧を抜くような重い槍は振り回しが難しく、
特に戦場においては突く以外の動作は困難である。
真っ向から戦わなければいいだけの話になる。



■関節の可動域

フルプレートを構成する上で重要になるのが
関節の可動域である。

気前良く装甲を追加していった結果、
どう考えても動けませんほんとうにありがとうございます
というのはよくある笑い話である。

鎧をデザインする上で注意すべき関節は
『首』『肩』『腰』『肘』『膝』
『腿』『手首』『足首』などである。

特に見落としがちなのが肩と腰と腿。

肩は左右に上げられるだけでなく、
前後に振る可動域が必要になる。
肩当を大きく取りすぎると、この可動域が大きく減る。
この可動域がないと、武器が振れなくなる。

腰。
腰は左右旋回と前後屈伸が必要になる。
特に腹部の鋼板の組合せと腰当てを気をつけないと
旋回か屈伸か片方しか出来なくなる。

さらに腿(モモ)
腰当、特に前垂れを硬質材にすると
歩くのもままならない。

鎧をデザインするのであれば、
この辺りを特に注意するといいだろう。



■獣に対する対策

戦場では人が相手であるが、
冒険であるならば人外の魔物や獣が
相手になる場合も多いだろう。

それでは、標準的な四足獣相手だと鎧はどう機能するのか?
一般的な獣の場合、その攻撃方法は爪や牙になる。

爪であれば刃物と対処方法はそう変わらない。
対刀剣類と同じく身体の外側を防御すれば対処が可能である。

しかし、牙であれば状況が少し変化してくる。

牙の場合、上からと下からの挟み込みになる。
鎧の構造上、軽量化の都合上外側と内側の装甲が違う場合もある。

腕や足のを狙われた場合、
薄い内側の装甲を貫通するかもしれない。


まだ、動物によっては毒液などを吐しゃする場合もある。
通気性を考慮して、装甲に隙間があった場合
無防備に毒液を浴びる結果になるかもしれない。


しかし一方で、ガチガチに重装備を固めたとすれば
どうしても機動性が犠牲になる。

そんな状態で大型の獣の突進を喰らったり、
上から圧し掛かられたらまず助からない。



■軽鎧の設計図

上記におけるフルプレートの知識は、
そのまま軽装に転用が可能である。

むしろ、ファンタジー的な軽鎧を設計する上でこそ
役に立つだろう。

ファンタジー鎧の設計の醍醐味は、
デザインを良くしつつ少ない装甲でどれだけ
それっぽく見せるかが鍵になる。

そうした時に大切なのは、要所を護るという概念である。
人体の急所や戦闘における要所に装甲を配備すれば
それだけで鎧に見えるから不思議である。

心臓、内臓(胴)、首、肩(正確には肋骨及び臓器)
腕・指(武器の持ち手)、脚(ゴツいロングブーツ)などを意識してみると
違った目線でデザインが進むかもしれない。



■リアルとファンタジーの狭間

上記は、比較的リアルに近い視点でみた鎧に関する考察である。
(考察というよりトンデモ知識に近い)

しかし、これを忠実に再現する必要はどこにもない。

創作の登場人物ともなれば、両手剣を軽々扱ったり
魔法力で骨格を強化したり、体内に重火器を持っていたり
自身に力が無くても特別なアイテムを持っていたりと
いくらでも抜け道は存在する。

デザイン重視大いに結構。
私自身としても、ビキニアーマーは大好物である。

鎧をソレっぽくみせるための一つの手法として
軽く聞き流していただければ幸いである。

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